駄文 : 最もジーンズが似合う男「JAMES DEAN」

歴史上初のティーンエイジャー

大人と子供の中間に位置し、自分でもその身を持て余しているのがティー
ン・エイジャーであるが、実はこの呼名は決して古いものではない。
もちろん、英語としてのティーン・エイジャー、すなわち10台の人間という
単語はあったが、これが独特の意味を持ち出すのは第二次世界大戦後である。
1950年台に広まったこの言葉、それではそれ以前にはどうだったのであろう
か。戦前のハリウッド映画が描くところの10代の青少年の実態は、これはも
うしつけのよい、大人に愛される子供という位置づけで、すっかり大人の予
備軍として定義されていたのである。1930年台には大体こういう世代を真っ
向から描く映画はなく、あってもしれは当たり障りのないものだったのであ
る。これが変わりだすのが戦争後で、一つにはアメリカという、それまで世
界の田舎者と思われていた国民が、第二次世界大戦によって一躍、世界の中
心に躍り出たという世界的背景がある。これという歴史を持たないウブな国
と思われていたアメリカがこの戦争を機に、若者たちがGIとして世界を見、
それぞれの国でアメリカにない文化や歴史に接し、それを彼らが国に持ち帰
り、いわばカルチャーショックをこれによって与えられたのである。これが
アメリカの戦後文化の土壌である。こういう新しい世界観は、当然人々の
日々の暮らしにも影響を与え、アメリカ人民はこれによって人生に目覚める
のである。そして自分の強さを悟り、世界をリードしていくという使命に燃
えることとなる。これがアメリカの戦後である。こういうひたすら崇高な使
命感の一方で、戦争によって人間のギリギリの極限を観てしまった兵士たち
が、一般の市民生活に上手く適応できなくなるという状況が作られた。戦争
の影響の明暗である。ティーン・エイジャーとは、こういうアメリカの戦後
の人々の一種のせめぎあいの中から生まれたものである。豊かで強いアメリ
カと、一方で人生に目覚め、内省的になったアメリカ、これが、多感な10代
に強い刺激を与え、一種の真空状態を生み出し、自覚の中に自らを模索する
ティーン・エイジャーを代表するのがジェームズ・ディーンである。1931年、
インディアナの片田舎に生まれ、1955年ハリウッド・スターとして3本の映
画を撮り、輝かしいスタートを切った矢先、ロス・アンジェルス郊外のマル
ホランド・ドライブでポルシェ・スパイダーをクラッシュさせ、24歳でこの
世を去る。ディーンは最初のティーン・エイジャーと呼ばれた。それは、彼
こそこのティーン・エイジャーの要件を満たした最初のハリウッド・スター
だったからである。それまでの青春スターのように大人の言いなりになる若
者ではなく、自分自身を突き詰めて考え、人生とはなにかを模索するうちに、
ただ大人の言いなりにはならないぞという姿勢を初めて明確に示したからで
ある。これは、当時の同じ思いの青少年に強烈な支持を受け、ディーンはス
ターになり、この称号を得るのである。
歴史上初のティーン・エイジャー

最もジーンズが似合う男　JAMES DEAN

ジェームズ・ディーンが愛用したのはLeeの101であったとされる。これは
1924年から生産が始められた。今日、Lee ridersの名で呼ばれる、Leeの
ベーシック・モデルの初期型のジーンズだ。シルエットはわずかにテーパー
ドしたストレート・タイプジーンズの基本スタイルである。
これに赤いスイングトップを組み合わせたのが、ジーンズとジェームズ・
ディーンの名を不朽の名作のものした作品『理由なき反抗』で、これはその
タイトルも含めて、最初のティーンエイジャー、ジェームズ・ディーンを世
界中の人々に印象づける事となる。監督のニコラス・レイにとっても、これ
は代表作となった。レイはジェームズ・ディーンの中に眠っていたこの名や
メル10代の感性を見事に引き出したのであった。ここで彼が来ていたのはマ
クグレガー社製のスイング・トップで、このコットン製の赤いショートジャ
ケットは、ジーンズと並んでディーンのトレード膜となる。因みにスイング
トップというネーミングは、VAN社長の石津謙介社長の命名になるもので、
れっきとした和製英語である。米国でこれを言う時は、ジップ・フロントの
コットン製ショート・ジャケットと、いささか面倒な表現になる。スイン
グ・トップの方がしっくり来るから不思議だ。ともあれ、世界最初のティー
ンエイジャー、ジェームズ・ディーンは、Leeの101とマクグレガーのスイン
グ・トップでそのキャラクターを不動のものにしたのである。世界がこれを
ティーンエイジャーの制服と認めたのだ。